親の力では、もうどうすることもできないことがわかり、復学支援に依頼することを決めました。
そしてとうとう登校刺激の日がやってきました。
登校刺激 5月22日
この日、支援の藤本先生に登校刺激をかけていただきました。
前日に学校から連絡のあった機関に、両親が呼び出されたから行ってくると息子に説明しました。
そして、初めて、訪問のM先生とN先生にお会いしました。
夕方、父親と藤本先生が先に家に入ります。訪問の先生方は近所で待機していただき、息子の登校の意思が確認できれば、入ってもらうことになります。
突然知らない人が父親と家に入ってきたものですから、息子は驚いたと思います。
息子に説明し、藤本先生が息子と二人きりで話をしてくださいました。息子の今の状況、過去の状況などを聞きだし、息子も受け答えをしています。
どうやら学校で『いじられていた』 ようです。小学校の時から・・・
そしてもう一点、息子のコミュニケーション能力が低いこと、相手との間の取り方などがわかっていない様子が浮かんできました。
息子は藤本先生とのやりとりの中でも、常に自分が優位にたとうとする様子があったそうです。
息子が藤本先生にやり直したい意思をみせました。
藤本先生はそれなら、手伝ってくれる人を頼むからと、息子の前で訪問の先生に電話をいれ、これから来てくださいとお願いしました。
外で待機していた訪問の先生が我が家に到着すると、藤本先生が息子に訪問の先生方を引き合わせました。しばらく息子と訪問の先生方と3人で話しをしてもらいました。
訪問の先生は、ずっと学校を休んでいたのでいろいろ準備や困ったこともあるだろうから、一緒に助けてくれるお兄さんという立場です。もちろん訪問の先生方もプロのカウンセラーです。
息子には学校に行っていない子供の所を回っているお兄さん・遊び友達というスタンスで接しておられたようです。
我が家の場合は、二人の先生にお兄さん役で入っていただきました。それも、息子がコミュニケーション能力が低いためのようです。
先生が2人で話しをしながら、息子を話しの中へ引き入れていく方法をとられたようです。又N先生がM先生より上の立場という設定をし、先輩(目上)の人に対してどういう対応をしなければいけないかということを、実際に息子の目の前で見せていただいたようです。
その間に別室で待機していた私たち両親に、藤本先生から説明していただきました。
『どうやらいじめのたぐいがあったようです。程度はわかりませんが、小学校の頃からと思われます。息子さんは、相手との間の取り方などがわかっていないようです。このまま放っておくと、引きこもったりしゃべれなくなることも考えられました。
ギリギリの線だったのではないでしょうか。
通っていた中学校にもどすのがよいかどうかは、わかりません。男子も女子もから、やられていた様子があり難しいです』
その後、息子と藤本先生・訪問の先生方のところへ、父・母・娘で話しをしました。
息子は「これから曜日を決めて学校へ行くようにしたいので協力してください」 と言います。
私は『毎日行かないの?』と思って考えて黙っていると、藤本先生がフォローしてくださいました。
「これから毎日学校へ行くようにしたいので協力してください」と息子の口から聞くことができました。
いったい、先生方はどんな魔法を使われたのでしょうか。やっぱり息子は学校へ行きたかったんだなぁと思うと涙がでてきます。
これからが、息子の新しい道の第一歩です。
訪問の先生 5月23日
登校刺激の翌日、訪問のM先生とN先生がこられました。
家への訪問ですが、昼間家には息子しかいません。大人がいなくてもいいのだろうか?息子は寝ていないだろうか?鍵を開けることができるだろうか?色々と疑問が浮かんできます。
実は、前日の登校刺激の後、M先生が「明日行くから玄関あけてな〜」と息子と約束していました。息子もまんざらでもなさそうです。
登校刺激の後、息子の口からは先生方の話はあまり出ませんでしたが、夜に「明日2時〜3時やんな」とだけ聞いてきました。
息子の中にも何か期待するものがあったのかもしれません。
学校への対応
ちょうどこの翌日、学校から特別支援会議に息子のことをかけたいとの連絡がありました。
担任の先生も心配しておられます。支援の藤本先生に相談させてもらいました。
現状は、子供の足りない部分が大きい。
1年くらいフォローすれば、できるようになるが、それまで待っていられないですね。現時点では、環境が悪いです。学校の男子・女子両方からいじられている様子があった。本人が足りなくても環境がよければ、又環境が悪くても本人がレベルアップしていればうまくいくんですが、今は両方たりない現状で難しいです。
今の時点では、もとの中学校へ戻すのがよいかどうかもわかりません。もう少し延び幅をみてみましょう
やっと最初の一歩という感じです。
訪問の先生方が、いつ来られて、何をされて、何時に帰れられたのか。息子に聞きたくなりますが、がまんですね。
100円ちょうだい 5月25日
日曜日にしては、息子が早く起きてきました。
息子 「お母さん今日でかける?」
母 「買い物へいくけど」
息子 「おやつ欲しいんやけど」
母 「買い物行った時に買ってこようか」
息子 「いや、そうじゃなくて・・・100円」
母 「お小遣いはあげたやろ」
息子 「もうないよ。もういいよ!」
息子はおやつを口実に外へ買い物にいきたいようでした。
この時期支援の先生から外出は禁止されていました。息子の中では、まだまだ外出を止められている理由がわかっていないようです。
母が出かけるときに、もう一度息子から言ってきました。
母 「行ってきます」
息子「100円ちょうだい」
母 「あかんよ」
息子も粘ってきますが、親の口数がふえてもろくなことがないようです。
訪問の先生 5月27日
前回の訪問から4日後に訪問の先生がこられました。母の帰宅前に帰られたようです。
息子の部屋へ行くと、心なしかきれいになっています。
母「部屋、ちょっときれいになってるやん」
息子「今日来てん。片付けた」
あいかわらず、単語のみの返事です。
この時は息子が訪問の先生のことをどう思っているかは、わかりませんでした。でも夕食後、息子が娘に自慢気に話していました
息子「 お姉ちゃん、マリオテニスやったで」
娘 「うそ! なんで?」
息子「もってきはってん。カバンの中に一式入ってるんやで!スマブラもしたで」
娘 「いいなぁ」
どことなしか、嬉しそうな息子でした。
登校刺激後に、動き出した息子でしたが、まだまだ考えが甘く、親もまだ甘いという危なっかしい状況です。
『登校刺激』という言葉を聞くと、無理矢理じゃないのかとか、引っ張ってでも連れていくんじゃないのかといったイメージがあるようですが、それでは登校するだけです。登校を継続させるためにも、息子の学校へ行きたいという意思を引き出すことを重視して対応してくださいました。
なんといっても、訪問のお兄さん(先生)の存在が息子は嬉しくて仕方ない様子です。
家にいては、絶対みられない息子の笑顔が印象的でした。